ごあいさつ


明治の頃より百十余年、宗像の地で創業して依頼、片山醤油店の『味之王』は、地元のみなさまに愛されて歳月を刻んでまいりました。九州で親しまれている甘口の醤油の中でも、そのまろやかな味わいが特徴です。

初代の忠太郎は旧宗像郡南郷村の要職に就いていたそうです。家が近かった大正14年の生まれ母方の祖母は、初代の事を覚えていました。小学校の帰り道、醤油の香ばしい匂いに誘われてわざわざ遠回りして片山醤油店の前を通っていた時のこと。白くて長いひげをはやしたおじいさんがそこに立っていて、とても怖かったと。それが忠太郎でした。実際の写真の中の忠太郎はとても優しい目をしています。


わが祖父は戦争から無事生還して、戦死した兄に代わって3代目を継ぎました。息子2人を戦争にとられた片山醤油店はまさに存亡の危機だったそうですから、二男の帰還は2代目をどんなに安堵させたことか。時代は移り、平成に入ると醤油の消費量は減少の一途をたどり、どこのメーカーも危機感を募らせています。片山醤油店もしかり。そんな状況のなかで私が5代目を継ごうと決心したのは、歴代の当主たちが長年かけて築き上げてきた商品を、地場の味をなくしたくないという一心からでした。


ありがたいことに、今でも忠太郎の時代からの代々のごひいきのお客様がいらっしゃいます。醤油はその家の味を決める基本の調味料ですから、お客様の慣れ親しんだ味を守り続けることが片山醤油店5代目を継いだ私の大事な使命。そして、時代に合わせた商品開発も欠かせません。今は、4代目である母・美恵子と共にあれやこれやと試行錯誤の日々です。

片山家はにぎやかです。家族それぞれの友人や仲間たちが集い大勢で食卓を囲む機会が多いのです。そんな時、4代目は「味之王」を駆使してあれこれ自慢の手料理をふるまいます。そして、それらをもとにしてうまれたのが「どんぶりのたれ」「香り酢じょうゆ」「かけしょうゆ」などの醤油調味料シリーズです。私にとってはどれもほっとするおふくろの味、とでももうしましょうか。
みなさまもぜひお試しください。

片山醤油店5代目 片山信一郎